2025年3月29日、当NPO理事・小児科医の榊原洋一さんがご逝去されました。
榊原さんは、2001年の当NPO設立当初から、理事としてブックスタートのためにご尽力くださいました。グローバルな視点に基づく学際的なご知見、すべての赤ちゃんへの愛情と分け隔てない優しさは、日本の活動を立ち上げ、形づくる上での大きな指針となっています。
榊原さんは、小児科医として発達障害の臨床研究や、発達障害児の保育、子どもの生育環境とその発達への影響を研究対象とされてきました。「子どもは未来である」をスローガンに掲げるインターネット上の研究所「チャイルド・リサーチ・ネット (Child Research Net)」の所長としても、国内外に向けて継続的に情報を発信されていました。
2014年に開催された当NPO主催の講演会『赤ちゃん~ゆりかごの中の科学者~』で、榊原さんは「子育て」について「社会」という言葉を用いて語られています。
「子育て」の方法は、時代とともに変化します。
しかし、どの時代においても、子ども達が、社会の中で人と関わりながら成長し、大人になっていくことに変わりはありません。
人間という「社会性」を持つ動物にとって、「子育てを支援していく」ことは、親にとっても重要なことでありますが、様々な人が子どもと関わりを持つという観点から見ても、極めて大事なことであると思います。
榊原さんは「社会全体で子育てする」という視点からも、ブックスタートに可能性を見出されていました。そして、日本各地での実践から得られた経験の蓄積が、世界と共有されるべき価値のあるものであることを早くから示唆され、活動の国際的な広がりに向けて、惜しみなく力を注いでくださいました。
2020年には、赤ちゃんに絵本を贈る活動の世界的なネットワーク「Global Network for Early Years Bookgifting」の会議において、シェアブックスのひとときが、赤ちゃんの発達に与える影響について、学術的な研究結果に基づいたお話をしてくださっています。
Global Network for Early Years Bookgifting
→ Global Network for Early Years Bookgiftingについて
→ 榊原さんの講演(2020年10月)
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どの子も、心豊かに。幸せに。
榊原さんの言葉の根底には、常にその思いがあったように思います。
「ブックスタート」が「すべての赤ちゃんの幸せ」を願う事業として歩み続けるために、榊原さんが遺してくださった数々の深い示唆を、これからも大切にして参ります。
心より感謝を申し上げるとともに、ご冥福を、謹んでお祈りいたします。
※榊原さんのお話「専門家から見たブックスタートの可能性」はこちらから
→ 子どもが社会とかかわりながら育つということ