NPOブックスタート Bookstart Japan

自治体の方へ

様々な分野の方々と共に、母語の絵本の出版・制作・普及について考える場を立ち上げました/母語の絵本について考える1

「So happy」と、絵本を片手に赤ちゃんにキスをするお父さん。
「私の国の言葉が書いてあって嬉しい」と笑顔を見せるお母さん。
これらは「多言語対応絵本」をブックスタートで受け取った外国人保護者の様子です。

日本に暮らす外国人の数は、直近の調査で約359万人(※1)と過去最高になりました。
また、日本で生まれた赤ちゃんのうち、両親もしくは父母のどちらかが外国人の赤ちゃんの割合も、全体の4.8%(※2)となっています。
※1 出入国在留管理庁在住外国人統計(2024年6月末現在)
※2 2023年度人口動態統計「日本における外国人の人口動態」「父母の国籍別にみた年次別出生数及び百分率」を元に算出

これらの数値を裏付けるように、ブックスタートを実施する自治体からは、ここ数年、「様々な国にルーツをもつ対象者が増えた」といった声が多く聞かれるようになり、多文化共生の取り組みの必要性が高まっています。

そうした状況の中、当NPOでは2023年度、「多言語対応絵本」を自治体に試験的に販売しました。
これは、6タイトルの日本語の絵本について、そのテキストの中国語、韓国語、ベトナム語、ネパール語、ポルトガル語の翻訳シールを作成し、手作業で貼付したものです。

試験的に制作した「多言語対応絵本」

外国人親子に多言語対応絵本を手渡した自治体からは、「母語の絵本は、家庭での読みきかせのきっかけになりやすいのではないか」「多言語対応絵本と日本語の絵本を用意できて、選んでもらえたのが良かった」「母語の絵本があることで、親子に対応する際、距離が近づいた」といった感想が聞かれ、母語の絵本を用意することの大切さを実感しました。

一方、自治体からは、「継続的に提供してほしい」「5言語以外にも対応してほしい」「多言語対応絵本のタイトルを増やしてほしい」といった要望もありました。

[報告] 多言語対応絵本 試験実施報告会 ~考えてみよう。外国人親子に「絵本」でできること~ – ブックスタート

言語、文化など、多様な背景をもちながら日本に暮らす外国人親子にも絵本を楽しんでもらうために、何ができるだろうか。
まずは、それぞれが自分の言葉で楽しめる絵本の選択肢を増やすことが必要なのではないか—。

そこで当NPOでは、様々な立場からこのテーマに関心を持つ方々と共に、それぞれの経験やアイデアを持ち寄り、広く母語の絵本の出版・制作・普及について考える「母語の絵本について考える会」を立ち上げました。

第1回「母語の絵本を考える会」の様子

2024年7月下旬に行った第1回の集まりには、「外国人親子のために絵本でできることを考えたい」「母語の絵本の出版・制作・普及を一緒に考えたい」という思いを持つ児童書編集者、絵本作家、研究者、多文化共生に取り組む団体の方など、約20名が参加。
それぞれの経験や知見をもとに、意見が交わされました 。

会の冒頭には、日本に暮らす外国人女性の産前産後と子育てをサポートする特定非営利活動法人 Mother’s Tree Japan 事務局長の坪野谷知美さんに、子育ての現状についてお話しいただきました。

次回は、坪野谷さんに伺ったお話をご紹介します。

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連載「母語の絵本について考える」

連載「母語の絵本について考える」その他の回を読む
1.様々な分野の方々と共に、母語の絵本の出版・制作・普及について考える場を立ち上げました※本稿
2.母国を離れての出産、子育て~外国人女性の現状
3.子育て中の外国人保護者にインタビュー