世界に広がる「絵本を贈る」活動
1992年にイギリスで発案されたブックスタート。赤ちゃんと絵本をひらく「体験」とともに「絵本」を贈るこの活動は、子どもの健やかな育ちを支える取り組みとして、今や世界中に広がりを見せています。
2018年には、各国の活動団体をつなぐ国際ネットワーク「Global Network for Early Years Bookgifting(GNEYB)」が、ヨーロッパの読書推進団体の共同事業体である「EURead(イーユーリード)」内に発足しました。その輪はコロナ禍でもゆるやかに広がり続け、現在、ヨーロッパ、アフリカ、中東、アジア、オセアニア、北米、南米を含む世界各国から、32の国と地域が参加。年間1,000万冊以上の絵本が、赤ちゃんや子どもたちに届けられています。
NPOブックスタートは、GNEYBの設立当初からワーキンググループの一員として参画し、ネットワークの運営に参画しています。 (※詳しくはこちら)
初の対面国際カンファレンス開催・日本からも参加
このたび、2025年6月11-12日に、GNEYBとして初めてとなる対面での国際カンファレンスが、ベルギー・ブリュッセルにて開催されます。この会議に、日本からもNPOブックスタートが参加し、25年にわたる日本の活動から得られた経験を発信します。 (※詳しくはこちら)日本のブックスタートは、2001年に開始されて以来、一貫して、その効果を教育的なものではなく、「赤ちゃんの幸せ(well-being)」に見出してきました。また、多くの自治体で、市民ボランティアが参画する行政の事業として、地域に根差して取り組まれている点も、国際的に評価されています。
活動のノウハウを集約した「Bookgifting Program Toolkit」が完成
GNEYBでは、メンバーの実践経験をもとに、取り組みに役立つヒントや情報をまとめた実践ガイドブック「Bookgifting Program Toolkit」を制作しました。「立ち上げ」「運営」「継続」と、活動の段階ごとに3章で構成。関係機関との連携体制の作り方や、絵本を手渡す人たちへの研修プログラムの立て方など、充実した取り組みに欠かせない情報が盛り込まれ、多くの部分に日本の経験が活かされています。
今回のカンファレンス冒頭では、その完成が報告されます。また、これから活動を始めたいと考える国や地域で情報が活用され、取り組みをさらに世界各地へと広げるための方策についても検討される予定です。

表紙「Bookgifting Program Toolkit」
「本」を通じたwell-beingへの貢献 EUや世界銀行も注目
なお、このカンファレンスは、GNEYBが属するEUReadの年次総会と併催され、欧州議会議員や、世界銀行関係者の参加も予定されています。世界銀行は近年、「Read@Home」プロジェクトなどを通じて、グローバルサウスの子どもたちへの支援に力を入れており、「読書」や「誰かと共に本を読むこと」が子どもの「well-being」に与える影響に、大きな関心が集まっています。
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「赤ちゃんの幸せ」を願い、その地域の人たちの手と言葉を介して、赤ちゃんに絵本を届けてきた日本のブックスタート事業。25年にわたる実践と経験が、今、世界の赤ちゃんの「well-being」につながり始めています。