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[開催報告]事例紹介 広島県尾道市/ブックスタート研修会2019(5)

事例紹介は、事業に深く関わる方が、その地域のやり方や大切にしている思いを、生の声で伝えるプログラムです。
3回目にご紹介するのは、2019年6月25日開催の広島会場から、広島県尾道市の発表です。

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発表者は、社会福祉協議会※(以下、社協)の槙麻美さん。
社協が事務局であるメリットを活かして、様々な立場の人が関りやすい体制を整えていること。さらに、子どもの成長をあたたかく見守る地域づくりの基盤として、ブックスタートが機能している様子もお話しくださいました。
※社会福祉協議会は、「福祉のまちづくり」の実現をめざした様々な活動を行う民間の団体。ボランティアや市民、行政などと協働しながら、地域の福祉増進に取り組んでいる。

社協が事務局となって事業を行う意義

ブックスタートは、図書館や保健センターなどの行政が事務局となり、全国各地で行われています。尾道市のように、社協が事務局となって取り組む例はまれですが、社協だからこそできることがあるといいます。

まずは、各機関や様々な立場の人と連携が取りやすいこと。社協は、行政ともボランティアとも、日頃から他の事業を通して関わりが多くあるため、関係づくりがしやすいのです。だからこそ、各機関どうしをつなぐ役割も社協が担えます。

さらには、事業の中で課題が生じた際、民間である社協だからこそ、比較的柔軟に対応できることがあります。例えば、予算が厳しく、配付しているバッグについて検討が必要になった際は、「バッグを手渡すことで図書館バッグとしても活用してもらえるし、健診会場で、たくさんの荷物で手がふさがっている保護者に絵本を手渡すのだから、バッグがあった方がよいのでは」というボランティアの意見を重視。他事業で連携していた地元の大学や企業に協力を依頼し、予算を抑えたバッグを制作することができました。

1歳6か月、3歳でフォローアップ事業を実施

尾道市では4か月児健診でブックスタートを行っていますが、1歳6か月児健診で「ブックスタート・プラス」、3歳児健診で「ブック・ステップアップ」事業も実施。それぞれの機会で読みきかせを行い、子どもが気に入った絵本をプレゼントしています。

会場では、読みきかせを受けている際に、寝転んだり歩き回ったりする子もいて、中にはそんな我が子の様子を見て申し訳なさそうにする保護者もいますが、「耳で聞いているから大丈夫ですよ」と声をかけ、和やかな雰囲気をつくるようにしているそうです。

4か月、1歳6か月、3歳と継続して事業を行うことで、子どもの成長を見守る機会にもなっています。


発表スライドより

幼い子を育てる保護者の気持ちに寄り添って

現在、子育て中の槙さんは、ブックスタートで出会う保護者に対し、「一緒に頑張ろう」という気持ちで関わることが多いとのこと。色々な人から言われる「大変なのは今だけ」という言葉にうなずきつつも、「それでもやっぱり、今がしんどい」と感じてしまう……。そんな保護者の気持ちがよくわかるからこそ、ブックスタートではゆったりとした時間を過ごしてほしいと考えているそうです。

ブックスタートは絵本をプレゼントすることに注目されがちだけれど、この事業の意義は、子育て支援、ひいては地域づくりにつながっている点にあると、槙さんは言います。親子でふれあう時間を持つきっかけを届けることはもちろん、ブックスタートでは「赤ちゃんが生まれたことを、地域のみんなが喜んでいるよ」「たくさんの人が子育てを応援しているよ」ということを伝えられる機会にもなっています。

大人も子どもも、世代を越えて共に助け合いながら生きていく。ブックスタートがそんなきっかけになることを願っているそうです。

※次回は広島会場で行われた、広島県府中市の事例発表の様子をご報告します。

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▼開催報告「ブックスタート研修会2019」その他の回を読む

1.  講演 スギヤマカナヨさん
2. ワークショップ
3. 事例紹介 鹿児島県霧島市
4. 事例紹介 宮崎県小林市
5. 事例紹介 広島県尾道市 ※本稿
6. 事例紹介 広島県府中市