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フィンランド/世界に広がる「赤ちゃんに絵本を贈る活動 」2

世界幸福度ランキング――。国連が毎年発表するこの調査、2018年の1位はフィンランドでした。「幸福度」とは、国民が自分の感覚でどのくらいの幸福を感じるか、という国民調査の回答(10段階)をもとにした指数です。

さて、そのフィンランドでのブックスタートは2017年に試験的に、2018年からは全国規模で開始しました。ブックスタートの推進団体である「Lukukeskus(フィンランド読書センター)」がEUReadで行った発表をレポートします。


事業開始の背景
フィンランドは、OECDの学習到達度調査(PISA)で毎年上位にランキングする国。しかし子どもの読書環境は近年あまり芳しくないそうです。そこで「子どもの発達/成長において、絵本の読みきかせはよい影響をもたらすと親に伝えること」を目的とし、事業を開始することになりました。


キーワードは平等性
ブックスタートの実現にあたって最も重要なキーワードは「平等性」です。社会的・経済的背景に関わらず平等に、すべての子どもと家庭が活動の対象となることを重視しています。


ネウボラとの協働
すべての赤ちゃんにブックスタート・パックを届けるために、「産科・子ども保健クリニック」(lastenneuvola=ネウボラ)と協働して事業を行っています。このクリニックは全自治体の保健センターにあり、利用は無料。ネウボラは妊娠から出産、小学校入学前までの子どもと親の健康を、継続的にサポートする制度です。どの社会的階層に対しても平等にサービスを行い、全家庭の99%がこのクリニックを利用しています。こうして国民に広く利用されていることから、すべての赤ちゃんに届けるためには最良の場となります。


実施の様子
政府が国内すべての保健センターにブックスタートの開始を通達。国を挙げての取り組みに注目が集まっています。また、2019年から2021年の3年間は、フィンランド文化財団の財政支援による全国的な実施が決定しました。パックには絵本とガイドブックに加えて、図書館カードや身長計を兼ねた読書チャートがセットされています。

▽身長計を兼ねた読書チャート


幸福度1位の国のブックスタート
読書推進団体が中心となって進めているフィンランドのブックスタートですが、読書だけではなく、赤ちゃんと絵本を通じての気持ちのふれあい、家族との温かい時間を大切にしていることは言うまでもありません。

資源が少ないフィンランドでは、人に投資し、人を育てることを重視。そのために国民へのサービスが手厚いといわれています。税金が高くても自分たちの生活にきちんと戻ってくる。だから暮らしやすい国として認められ、幸福を感じるのかもしれません。
そんな社会で始まったブックスタートのこれからが、楽しみですね。

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