2025年6月、ベルギー・ブリュッセルで開催された「赤ちゃんに絵本を贈る活動の世界ネットワーク(Global Network for Early Years Bookgifting、以下GNEYB)」の初めての対面カンファレンスに参加しました。
対面での初開催、世界の仲間と集う
GNEYBが2018年に正式に活動を開始して以来、日本も事務局の一員として運営に協力してきました。現在では世界各地から33の活動がこのネットワークに参加しており、これまでに30回以上のオンラインミーティングが行われています。日本からも、地域に根差した取り組みの様子やボランティアの関わり方などを発信し、世界のメンバーから大きな関心を集めています。
長らくコロナ禍の影響で対面での開催が難しい状況が続いていましたが、今回、GNEYBの母体であるEURead (ヨーロッパ各地で子どもの読書推進に取り組む団体の連携組織)の年次総会に合わせて、ついに実現しました。

会場となった王立図書館。美しい街並みが一望できる「芸術の丘」の上に位置しています。
経験を分かち合い、意見を交わす
2日間にわたって行われたカンファレンスでは、これまでの7年間の歩みを振り返りながら、テーマ別の事例紹介やパネルディスカッションを行いました。今後の運営体制や活動の方向性についても、活発な意見交換がなされました。

参加できなかったメンバーからのビデオプレゼンテーションも。

オンラインで築いた関係のおかげで、初対面とは思えない和やかな雰囲気に。
特に注目されたのは、各活動の経験を「Start(立ち上げ)」「Run(実施)」「Sustain(継続)」の3つのカテゴリーに整理した『Bookgifting Program Toolkit』の活用方法についての議論です。まだ活動が始まっていない地域への紹介や、他のNGOとの連携の可能性など、前向きなアイデアが次々と出されました。

世界各地の活動から得られた経験を、ひとつにまとめたToolkitが完成しました。
世界が共感した、日本の活動で大切にしていること
期間中、日本のブックスタート事業について、ネットワークのメンバーに加え、欧州議会議員やNGO関係者など、幅広い層に向けて発表する機会がありました。
日本では活動の立ち上げ当初から、教育的な効果を目的とするのではなく、「赤ちゃんの幸せ」や「本を通じた心のつながり」を大切にしてきました。この理念は、近年注目されている「ウェルビーイング」の考え方にも通じるものであり、発表の際には多くの方々から共感の声が寄せられました。
また、「いっしょにえほん写真コンテスト」の取り組みについても動画を交えて紹介しました。発表後には、「来年はぜひ一緒に取り組みたい」と声をかけてくださる方も多く、うれしい反響がありました。

日本の活動と世界への広がりを紹介。
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今回のカンファレンスには、23の国と地域から37名が参加しました。参加者に共通していたのは世界各地で「幼い子どもたちに絵本を贈る」という、とてもシンプルな活動に取り組んでいるということです。
それぞれの国や地域には異なる社会背景があり、出版文化や福祉政策のあり方もさまざまです。しかし、活動を始めるとき、そして続けていくときに直面する課題には、驚くほど共通する部分がありました。だからこそ、互いの経験に耳を傾け、共感し、学び合う時間はとても豊かなものとなりました。
そして印象的だったのは、赤ちゃんに絵本を手渡すことが、その子の人生に幸せをもたらすと信じる気持ちが、国境を越えてつながり、カンファレンス全体があたたかな雰囲気に包まれていたことです。
今回のカンファレンスで得た学びや交流を、これからの活動に反映させながら、日本の取り組みが世界とより深く結びついていくよう、活かしていきたいと思います。
☆おまけ☆
会場には各国のパックが展示されていました。オランダのブックスタート・パックは、厚紙でできたバッグを開けると、絵本をくわえたカエルが登場!