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自治体の方へ

[報告] 新担当者向けブックスタート研修会2025

各地域でブックスタート事業を担当する職員の皆さんは、運営にあたり様々な課題と向き合います。特に、初めて担当を引き継いだときは、疑問や戸惑いもあるのではないでしょうか。

そんな皆さんに役立つ情報をお届けしたく、当NPOでは昨年度から「新担当者向けブックスタート研修会」をオンラインで行っています。今年は2025年6月19日(木)に開催し、全国各地から82名の皆さんにご参加いただきました。

プログラム
①全国の事例から知るブックスタート~事業運営において大切にしたいポイント~
②先輩担当者にインタビュー
・茨城県牛久市 牛久市立中央図書館 司書 星野美紀さん
・兵庫県三田市 子ども・未来部 子ども政策課 堂本健生さん
③NPOブックスタートのサポートについて
④質疑

「戸惑い」が原動力に
インタビューではお二人の先輩担当者にお話しいただきました。
兵庫県三田市の堂本さんが担当になったのは2023年度。ちょうど、新型コロナウイルスの感染症分類が5類に移行するタイミングでもありました。そのため、コロナ禍で読みきかせを休止していたブックスタートを今後どのように進めていくか、方針を見直す必要があり、戸惑いを感じたといいます。

堂本さん「会場の様子は一度見に行っていましたが、”すべての赤ちゃんとその保護者に、読みきかせの楽しい体験と共に絵本を手渡す”という実施方法の意味を理解したうえで、もう一度現場に立ち会ってみたのです。すると、この事業のよさが改めてわかり、読みきかせを再開するにはどのようにしたらよいか、具体的なイメージも沸いて、再開するなら今しかない!なんとしても実現したい!という気持ちが自然と高まっていきました」

*堂本さんにお話しいただいた、読みきかせ再開に向けた取り組みは、 [兵庫県三田市] 読みきかせ再開で健診がスムーズに?!でご紹介しています。

堂本さん「実は、今回紹介した取り組みを行うことができたのは、前任の担当者が事業としての課題を把握し、保健師さんやボランティアさんとのやり取りを積み重ねてくれていたからだと感じています。ブックスタートは本当に素晴らしい事業だと思うので、これからも三田市で継続していけるよう、私自身も後任につないでいくことを意識して携わっていきたいです」

三田市の写真からは、「これからも親子が笑顔になれるように」という、撮影した堂本さんの気持ちが伝わってくるように感じます。

関係者同士の信頼関係を築く
茨城県牛久市の星野さんは、事業を立ち上げた2003年から事務局を担当。なんと23年目です。牛久市のブックスタートが充実した形で継続できている鍵は「連携」にあるとして、関係づくりの方法をご紹介いただきました。

①保健センターとの定期的な関わり
4か月児健診でブックスタートを行う牛久市では、健診を担う保健センターの職員にも、事業への理解が浸透しています。図書館から、協力依頼文を年に1度提出するほか、保健師にボランティアの研修を依頼したり、NPOブックスタート発行のニュースレターを保健センターの職員にも回覧したりと、信頼関係づくりに励んできました。

②ボランティア同士のつながりを深める機会を設定
ボランティアの皆さんに楽しみながら活動を続けてほしいと、主に3つのことに取り組んでいます。1つ目は、「ブックスタート記録ノート」。その日の親子の様子をボランティアが記録します。館長も目を通してコメントを添えることで、ボランティアの励みになっています。事業開始当初からの記録が蓄積されたこのノートは、市民参画の証として、継続的な予算確保にも役立っています。2つ目は研修です。ボランティアの新規募集の際には、既に活動している方にも参加してもらい、交流の機会にしています。3つ目は見学バスツアー。ボランティアが他の地域のブックスタートを見学できるようにと、バスを借りて他自治体を訪問し見学する機会を作っています。見学時には食事会も設けて親睦を深めたこともありました。

星野さん「牛久市でブックスタート事業が始まって23年目。そろそろ、開始当初に絵本を手渡した赤ちゃんが、今度はお父さんお母さんになって、自分のお子さんをブックスタートに連れてきてくださるような時期になってきました。親子にとって、幸せな読書体験の第一歩であり続けられるように、私も引き続きこの事業を支えていきたいと思います」

「大したことはしていないんですけどね」と笑う星野さん。23年もの長い時間をかけて丁寧に築かれてきた関係者同士の信頼関係が、牛久市のあたたかなブックスタートにつながっていました。

参加者の声
二人の先輩担当者のインタビューや、NPOブックスタートからの全国の事例と運営に関する紹介等を聞いた参加者からは、アンケートに次のような感想が寄せられました。

「新しく担当になり、どのような理念や目的で活動しているのか理解できていなかったため、詳しく知ることができ、大変よい機会になりました」

「協働する各課とも理念を共有する大切さに改めて気づかされました。一方通行になりがちなので、教えていただいた方法を実践したいです」

「星野さんの立ち上げ当初のお話や、堂本さんのコロナ禍以降の戸惑いは、私自身も同じような状況だったためとても参考になりました。伺ったお話をぜひ活用していきたいです」

* * *

事務局を担う職員の方の熱意が、事業をよりよい形に変えていくのだということを、今回も皆さんから教えていただきました。そんな皆さんの熱意に応えられるよう、私たちも引き続き全力でサポートしていきます!

※今年度の「新担当者向けブックスタート研修会」は、2026年4月30日まで、自治体職員の方向けにアーカイブ配信中です。ぜひご活用ください。