「保健師さんの思いがたくさん詰まった、新しい取り組みが始まったんですよ」
愛知県あま市のボランティアさんから、そんな話を伺いました。
あま市では、母子保健事業の一環として、絵本の読みきかせやわらべうた、ふれあい遊びを取り入れた新たなプログラム「親子で遊ぼう!歯っぴい教室」が、2024年度からスタートしました。対象は、8~11か月の赤ちゃんとその保護者。3~4か月児健診で行われているブックスタートのフォローアップにもつながる取り組みです。この新しいプログラムに込められた思いや背景について、あま市子ども健康部健康推進課・保健師の橋本知美さんと西田祥野さんに伺いました。
「楽しいね!」を親子で共有することの大切さ
「子どもとどう遊べばいいのか分からない」「あやし方が分からないんです」
あま市ではこのところ、赤ちゃん訪問や子育て相談の場でこうした保護者の声を耳にすることが増えているといいます。例えば、 おもちゃがあっても、どう遊びに取り入れたらよいか分からない。子どもの成長に伴い、親子の関係性に悩む声も以前より多く聞かれるようになってきました。
「お父さんやお母さんに、もっと子どもの気持ちを分かってあげてほしいな、と思うことが増えていました」
そんな課題を感じつつ、親子に寄り添い続けてきた保健師の皆さんがたどり着いたのが、赤ちゃんの頃からの親子の関係づくりの大切さでした。
「子どもの感情の発達や自己肯定感を育てていくうえで、親子の関係性はとても大切です。そのためにも、親子で一緒に遊び、“楽しいね”と感じあえるような時間を、もっと届けていきたいと思ったのです」
その思いを形にしている取り組みのひとつが、3か月児健診で行っている「ブックスタート」です。ボランティアが親子一組一組に、わらべうたを歌い、絵本の読みきかせをするこの場には、「楽しいね!」と気持ちを通わせあう、親子の笑顔があふれています。そんなひとときを、もっと継続的に届けていきたい――。そこで、歯の生え始めという大切な時期における情報提供と、この思いを組み合わせ、「親子で遊ぼう!歯っぴい教室」はスタートしました。
保健師から改めてボランティアに協力を呼び掛けると、皆さん「喜んで!」と力を貸してくださることになりました。たくさんの方の思いと力のもとに、教室は運営されています。
歯磨きに、絵本に、わらべうた。親子で楽しむ90分!
2025年3月、教室の様子を見学させていただきました。
<当日のながれ>
1.絵本のよみきかせとわらべうた(担当:ボランティア)
この日紹介された絵本とわらべうた:
・絵本『りんご』(松野正子 ぶん・鎌田暢子 え・童心社)/『おかおあらうの みーせて』(もりといずみ 作・きくちちき 絵・講談社)
・わらべうた 「はなちゃん りんごを」/ 「ちびすけ どっこい」
2.親子ふれあいあそび(担当:理学療法士)
3.口腔ケアのお話(担当:歯科衛生士)
4.保護者同士の交流タイム(進行:保健師)

年10回、保健センターで開催。予約制です。

この日は8組の赤ちゃんと保護者がリラックスした雰囲気の中で参加していました。
教室は午前10時から11時30分までの90分。もともとは60分のプログラムでしたが、参加者の声を受けて30分延長されました。時間にゆとりが生まれたことで、親子ともにゆったり、のびのびと楽しめる内容になっています。

歯のケアに関する情報に加え、絵本やわらべうたの紹介資料も配付。紹介される絵本やわらべうたは、歯磨き指導で、赤ちゃんが顔に触られることに慣れることなども意識して選ばれています。
保護者からは「家の中での遊び方が分かった」「子どもが笑顔で私も楽しかった」「育児の悩みや不安なことを話せてよかった」という嬉しい声 が寄せられているそうで、保健師の皆さんも確かな手ごたえを感じているそうです。会場でお会いした赤ちゃんやその保護者の笑顔から、親子で“楽しみを共有すること”、そしてその“体験を届けていくこと”の大切さを改めて学ばせていただきました。