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福島県大熊町 離れていても、ふるさとからの思いは絵本に

 
「はい、大熊町いわき出張所です」
 
大熊町の保健師・猪狩優貴さんに電話をすると、いわき市にある出張所につながります。
2011年の震災による原発事故で、大熊町は全町避難を余儀なくされ、役場も町外に移しました。
2019年に本庁機能は大熊町に戻したものの、いまだ町の大半が帰還困難区域です。
町に帰還した人はまだ少なく、特に子育て世代の大半は、町を離れて暮らしています。
 
そのため大熊町では、いわき市と会津若松市に出張所を、郡山市に連絡事務所を設け、県内及び全国各地で生活している町民をサポートしています。
県内の方にはブックスタートも、保健師さんが、本庁と各拠点から赤ちゃんのご家庭を訪問し、実施しています。
 
訪問と絵本のプレゼントはとても好評です。
「大熊町の人が来てくれて、顔を見て話せる、ということで、安心できるのかもしれないですね。
絵本を手渡すと、赤ちゃんもですが、ご家族にも、お兄ちゃんお姉ちゃんにも喜んでもらえます」
と猪狩さんは話されます。
県内といえども、訪問に片道1時間ほどかかることも少なくありません。
でも、赤ちゃんとそのご家族に会えるのは、猪狩さんにとってもうれしいこと。絵本が糸口となり、会話も弾むそうです。
できることなら赤ちゃん全員を訪問したいところではありますが、県外で暮らす方には電話でお話をし、郵送で絵本と資料を届けています。
 
 
福島県大熊町 絵本といっしょにお送りする資料
 
絵本といっしょにお届けしている資料。おすすめの絵本も紹介しています。
 
 
震災前まで大熊町では、3~4か月児の集団健診でブックスタートを実施していました。
当時、司書としてブックスタートに携わっていた風間真由美さんは、現在、都市計画などを担当する復興事業課でお仕事をされています。
 
「本当は、町のなかで人と人とのつながりが作れればよいのですが、今はまだ、難しい状況です。
でも、親子に大熊町から絵本が届けられることで、ふるさととの“つながり”を少しでも感じてもらえるのではないでしょうか」
と今の思いを語る風間さん。
以前のように赤ちゃんや子どもたちとかかわる機会がないことにさみしい思いもあるそうですが、保健師さんたちが、多忙な中でも知恵を出し合い、赤ちゃんに絵本を届けてくれていることを、とてもありがたく感じているそうです。
 
 
先に紹介した絵本とともに届けられる資料(写真)には、次の言葉が載っていました。
 
――優しい声での読み聞かせは、日々新しい世界に出合う子どもたちへの“応援歌”です――
 
赤ちゃんをひざにのせて、ふるさとから届いた絵本をひらくとき、絵本を読む声はきっと、いつにも増してやさしくなるのではないでしょうか。
電話口で、猪狩さんと風間さんのあたたかく穏やかな声を聞きながら、そう思いました。
 
※ニュースレターNo.46(2014年9月発行)に、大熊町よりご寄稿いただいています。
https://www.bookstart.or.jp/uploads/bsnl46.pdf

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