取材や見学で全国各地を訪問し、お会いした方々からお聞きしたお話の中から、心に残った[VOICE]を紹介します。
■広島県府中市 主任児童委員 神田敏治さん
『言葉はないけれど、赤ちゃんとの間に「対話」が生まれた瞬間』
―府中市では、主任児童委員さんが、4か月の赤ちゃんに絵本を読んでプレゼントしています。最初にそのことを知った時、どう感じましたか?
神田さん 率直な感想として、4か月の赤ちゃんに絵本を読みきかせても、赤ちゃんは色や形はなんとなくわかっても、言葉は理解できないだろうし、読みきかせにどんな意味があるのかな?と思いました。
―実際にやってみてどうでしたか?
神田さん 実際に読んでみたら、赤ちゃんの視線が、僕の表情であったり、声だったり、周りの雰囲気だったり、もちろん絵本に対してもですが、ひゅっと視線が向くんですよね。読み手に視線を送ってきて、表情が変わるんです。
それを見た時に、これは、意味がわかるとかわからないとかいうような世界ではないんだな、と。なんらかそこに対話が、言葉としての対話ではないかもしれないけど、互いの間に対話が生まれている、と感じました。
―言葉はないけれど、対話が生まれた。
神田さん 通じ合うものが確かにあるという感覚ですね。だから、最初に思った、赤ちゃんに読んでも意味はないだろうという考えが、まったく変わりました。それはもう、全然違いましたね。
―ご自身は、お子さんが赤ちゃんの時に絵本を読まれましたか?
神田さん 僕の子育ての頃は、絵本を読みきかせたのは、もっと大きくなってからでしたね。でも、抱っこしたり、あやしたりはしていました。子どもが小さかった頃の、にこっとした顔や、いたずらした時の表情とかがものすごく忘れられないんですよ。
だから、お父さん、お母さんに何か、子育てを楽しめる場面をたくさん持ってもらえるといいなと思います。
今の保護者はなかなか忙しいのですが、一つの方法として、少しの時間でも赤ちゃんに絵本を読んで、赤ちゃんとふれあう時間が持てると、子育ての雰囲気も変わるのではないかなと思います。
―そのきっかけをブックスタートで届けているんですね。
神田さん ブックスタートでは、お母さんが赤ちゃんを抱っこして、僕らが絵本を読むのですが、お母さんが赤ちゃんの表情を嬉しそうに見るんですね。お母さんがリラックスして、赤ちゃんの表情を見て楽しんでおられる。だからブックスタートがきっかけとなって、子育てを少しでも楽しんでくれたら嬉しいですね。
(2019年2月)