事例紹介

山口県岩国市

「親子のためにアイデアや工夫を積み重ねて」

  • 取材日2013年3月
  • ニュースレターNo.41より抜粋
  • 事務局
  • 図書館
  • 年間出生数
  • 約1100人
  • 月齢
  • 1歳6か月
  • 実施機会
  • 健康診査

図書館、生涯学習課、子ども支援課、保健師、保育士等の関係者や市民ボランティアが、それぞれ得意とする分野を活かして工夫を重ねてきた岩国市。ブックスタートでの市長による読みきかせの様子をマスコミを通じてPRするなど、広報にも力を入れています。

 「はい、どうぞ。おうちでも楽しんでね」と、ボランティアが絵本を差し出すと、男の子がしっかりつかんで抱きかかえます。お母さんが「ありがとうは?」と声をかけると、「あっと!(ありがとう)」と可愛らしい返事が返ってきました。
 今回は、日本三名橋のひとつ、錦帯橋で知られる山口県岩国市の取り組みをご紹介します。

 

様々な立場の人が集まって親子を迎える

 岩国市の活動は、2011年7月に始まりました。事務局を担う図書館は、「岩国市子どもの読書活動推進計画」で、すべての子どもたちが本と出会うことができるよう、読書環境の充実を目指していることから、以前よりブックスタートに注目。子育て世代でもある市長が活動に関心を寄せたこともあり、事業費が予算化されました。
 開始にあたり、どの機会で実施するのかが課題となりました。岩国市では0歳児の集団健診が行われていないため、乳児全戸訪問(4か月児までを対象)と、1歳6か月児健診(最初の集団健診)が候補に挙がりました。しかし全戸訪問では、親子に会えるのが母子保健推進員だけに限られ、地域全体で子育てを応援していることが伝わりにくいのではないかといった意見もありました。そこでさらに検討を進めるため、図書館、保健師、保育士が、健診でブックスタートを行っている近隣の地域を見学。見学を通して、受診率が高い集団健診であれば、保護者の関心の有無に関わらず絵本を開くきっかけを確実に届けられ、さらに、様々な立場の人が子育てを応援していることを自然な形で伝えられるのではないかと考え、1歳6か月児健診での実施を決定しました。
 そして実施の際には、健診会場に図書館や生涯学習課、こども支援課や保育士、ボランティアが出向いて、直接親子と接することになりました。
 ボランティアについては新たに募集し、養成講座を開催。講座では、図書館や保健師などによる説明を通してブックスタートや子育てに対する共通理解を深めたほか、見学先の広島県廿日市市の職員とボランティアを招き、話をしてもらいました。このとき、同じ立場の方から活動への想いを直接聞いたことで、事業に関わる全員のモチベーションが高められたそうです。

 

廿日市市ボランティアとの交流の様子

 

待ち合いロビーをブックスタート用の優しい空間に

 ブックスタートの会場は、普段は待ち合い用のソファや自動販売機が置かれ、通路にもなっている保健センターのロビーです。会場づくりが始まると、あっという間に木製のパーテーションでコーナーが仕切られ、花柄のマットやぬいぐるみが置かれて、優しくあたたかな空間ができました。図書館の﨑本智子さんは「保護者にゆったりと落ち着いて話を聞いてもらうにはどうしたら良いか、関係各課で話し合い、少しずつ改善してきました。ボランティアさんもやりながら感じたことを教えてくれます。それぞれが得意とする分野を生かしながら一緒に取り組んでいることに心強さを感じます」と話してくださいました。ソファの下に敷かれたマットも、子どもたちが転落してケガをしないよう、何かできないかという意見から生まれたアイデアなのだそうです。

 

花柄のマットで明るい雰囲気に

 

すべての親子に絵本を介した
楽しいコミュニケーションのきっかけを

 「ぞうさんのお鼻とお鼻がくっついた」ボランティアが絵本を開くと、男の子が手を伸ばし、ページをめくります。別の子は、嬉しそうに動物の絵を指さします。
 保育士でもあるこども支援課の石本憩子さんは「1歳半になると、自分でページをめくるのが楽しかったり、言葉の意味もわかってくるので、読み手に共感しながら絵本の世界を楽しむことができます。その様子を見ると、絵本に関心のなかった保護者も“家でも絵本でコミュニケーションを取ってみよう”と思うのではないでしょうか」と話してくださいました。実際に、ブックスタートで初めて子どもとの絵本の時間を経験したという保護者や、保育園に入って初めて絵本に触れる子もいて、活動を通して、そうした親子にもきっかけを届けられていることを実感しているそうです。また石本さんは「すべての親子に出会える健診だからこそ、時には気になる様子に気づくこともあります。ブックスタートは、そうした場合にも自然な形で声をかけて関わることのできる機会になっています」と話してくださいました。

 

ぞうさん、どうなるのかな?

 

事業を根づかせていくための取り組み

 岩国市では、事業開始当初から、継続して実施するためには多くの人から事業への理解や共感を得ることが大切と考え、広報にも力を入れました。まずは市長に、第一回目のブックスタートへの参加を依頼。市長自ら読みきかせをする様子は、新聞や地元のケーブルTVでも紹介され、市民に広く事業を知ってもらう機会となりました。また、活動の周知ポスターを、市の施設だけでなく、産婦人科、小児科など複数の医療機関に掲示。さらに数か月後には、図書館でパネル展を開催し、実施の様子、対象者へのアンケートの結果、ボランティアの声などを紹介したところ、展示を見た方から「健診でブックスタートを受けるのが楽しみ」といった感想も聞かれました。活動が浸透するのはとても早く、今では、対象者のほとんどが、ブックスタートを楽しみにやってくるそうです。また、ブックスタートで手渡したラッコのバッグを持つ親子の姿を、図書館や市役所で見かけることも多くなりました。

 

図書館でのパネル展の様子

 

 あるボランティアは「お母さんや子どもの笑顔を見ていると、これから先、色々なことがあるかもしれないけれど、この笑顔をいつまでも忘れずに、いつかこの幸せな時を思い出してもらえたら…と思います。その願いを込めて絵本を手渡しています」と話してくださいました。
 子どもの健やかな成長を願い、行政とボランティアが力を出し合って行われている岩国市のブックスタート。皆さんの願いがギュッと詰まったバッグをもらい、嬉しそうに歩く子どもたちの可愛らしい姿と、その様子を見守る皆さんの明るい笑顔がとても心に残りました。

 

 

 

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