事例紹介

徳島県上板町

「様々な世代のボランティアが支える子育て支援の輪」

  • 取材日2012年3月
  • ニュースレターNo.37より抜粋
  • 事務局
  • 福祉保健課
  • 年間出生数
  • 約100人
  • 月齢
  • 1~5か月
  • 実施機会
  • 股関節脱臼検診

上板町のブックスタートは、隣町での活動開始を知ったボランティアが、声をあげたことがきっかけで始まりました。まちでは、複数のボランティアグループが協力し、ブックスタートや様々な子育て支援活動が行われています。

 春の暖かな日差しの中、ブックスタートの会場となる農村環境改善センターに、対象となる親子が続々と集まってきました。入口では「ブックスタート」と書かれたボランティア手作りの垂れ幕が、親子をあたたかく迎えます。今回は、ボランティアが中心となって様々な子育て支援活動を行う、徳島県東北部のまち、上板町の取り組みをご紹介します。

親子とゆっくり話せる時間を ~股関節脱臼検診でのブックスタート

 上板町でブックスタートが始まったのは2006年8月。隣町での活動開始を知ったボランティアから、上板町でも取り組みたいと声があがったのがきっかけでした。町の子育て支援ボランティアグループの事務局を担う本淨敏之さんが中心となり、活動に関する情報や必要となる予算、周辺自治体の実施状況など様々な資料を収集。町に要望を伝えたところ熱意が通じ、福祉保健課が予算を確保し、ボランティアがブックスタート・パックの手渡しなど運営に協力する形で、活動が始まったのです。
 上板町では、3か月ごとに行われる股関節脱臼検診で、検診受付後の待ち時間にブックスタートを実施。股関節脱臼検診は受診率も高く、所要時間も短いことから、ブックスタートで一組一組の親子とじっくり話をすることができ、毎回会場のあちこちでボランティアと話し込む保護者の姿が見られます。中には、検診終了後もブックスタート会場に戻り、絵本のことや親子で出かけられる場所のことなど、再度話を聞いて帰る方もいるそうです。また、検診未受診者には福祉保健課から案内を送り、役場の窓口でパックを手渡す他、保健師が家庭訪問をする際に持参するなどして、すべての赤ちゃんにパックを届けています。

  

受付開始までゆっくりお話ししていく人も 


親子と地域をつなぐブックスタート
 

 「あっ、笑いよる!」「じっと見よるなあ」ボランティアが絵本を開き、赤ちゃんの様子に合わせてやわらかな語り口で話しかけると、保護者が笑顔で「楽しいね」と赤ちゃんに声をかけます。広々とした会場は、あっという間に親子とボランティアの和やかな話し声や笑い声で満ち溢れます。「絵本を読んできかせた時の赤ちゃんは、保護者が初めて見る表情をしているかもしれません。赤ちゃんも絵本に興味があるんだなと保護者が感じて、家でも絵本を通じて親子でゆったりとふれあう時間を持ってもらえたらいいなと思います」と、本淨さんの奥様で一緒に活動をしている世子さん。
 読みきかせの前後には、手書きの地図に親子が集える場所などを示した「上板町おおよそまっぷ」を広げながら説明をします。世子さんは「ブックスタートは、ボランティアと親子が出会い、一組ずつとゆっくり話ができる唯一の機会です。地域や周りの人、赤ちゃん連れで出かけられる場所や催しなど、親子が色々なものとつながる起点になっていると思います」と話してくださいました。実際に、町の子育て支援センターが実施する「子育てひろば」は、ブックスタートでの声かけもあって参加者が増え、月1回だった開催が、週1回に増えたのだそうです。

   

ブックスタート開始を機に作られた「上板町おおよそまっぷ」


ボランティアが運営し、行政が支える様々な子育て支援

 上板町では、複数のボランティアグループが支え合いながら、ブックスタートや子育てひろばの運営支援、保育所や小中学校での読みきかせなど様々な活動を行っています。年代も下は10代から上は70代まで、男女問わず親子や夫婦で参加する方も多いそうです。取材当日のブックスタートにも、春休み中の中学生と大学生が、それぞれボランティアをするお母さんと一緒に参加していました。「核家族が増え、子育てについて相談する人が周りに少なくなった今、地域の住民として、子育て支援に関わりたいという思いを持つ人たちが集まっています」と本淨さん。一方で、無理をせず、できる範囲で参加することも大切にしているため、それぞれが継続的に活動に関わることができ、行事やイベント毎に思いを持つ人が自然と集まってくるそうです。
 そうした活動の一つで、毎週就学前の親子が集まり、情報交換や交流を行う「いちごmilk」も、県からの委託を受けた事業者とボランティアが協力して運営※してきましたが、委託期間が今年の3月末で終了。しかし、活動を継続させたいとの思いから、ボランティアが資金を集めて遊具を買い取り、無償で協力する形で続けていくことになりました。「町に十分な施設はないけれど、地域の手でできるところはやって、子どもたちを見守り応援したいと思います」と世子さんはおっしゃいます。
 福祉保健課の入口美由樹さんは「ボランティアの協力と行動力のおかげで、ブックスタートで一組一組に絵本が手渡され、その後も様々な場面で読みきかせ活動が行われています。また、保護者どうしが出会い交流できる機会も作られています。町としても、親子が楽しく過ごせる場所を増やしたいという思いがありますので、予算の獲得や活動の場の提供など様々な形で、今後もボランティアを支えていきたいと思っています」と話してくださいました。

   

中学生もボランティアとして母娘で参加

赤ちゃんを嬉しそうに見つめるお母さん

 あるボランティアは「ブックスタートが始まったことで町に種がまかれ、絵本を手渡した赤ちゃんや、今日ボランティアに来た中学生や大学生のお嬢さんたちが、これから素晴らしい花をいっぱい咲かせてくれると思います」と笑顔で話してくださいました。子どもの幸せを心から願い、親子に関わっていこうと行動する人が周りにたくさんいること、優しく見守ってくれること。それが親子にとって、なによりも心強い味方になっているのではないかと感じた取材となりました。

※徳島県の「子育てに優しいまちづくり事業」の一環として、県から委託を受けた「NPO子育て支援ネットワークとくしま」が、2年間、各地域の子育て支援ボランティアと共に事業を展開した。

 

 

 

事例紹介

  • 事例紹介
ページトップへ