コラム

近藤 初江

  • 保育士
  • 東京都北区立桜田保育園 園長

プロフィール

4年間の障がい児施設での勤務を経て、1991年より保育園に勤務し、絵本を取り入れた保育を実践。自身も、各クラスで読みきかせを行う。 また、保育雑誌等での絵本の紹介なども行っている。

第1回
『こんにちは 赤ちゃん』
第2回
『もぐもぐ ごっくん』
第3回
『わんわん、にゃんにゃん』
第4回
『のせて、のせて』
※ニュースレターNo.37~40(2012年4月~2013年3月)より

第1回 『こんにちは 赤ちゃん』

 4月、11名の赤ちゃんが保育園に入園してきました。 一番小さい赤ちゃんは4か月です。子どもたちのそばにいくと、大人の顔を「じーっ」と見ています。 「この大人は誰?」「この大人はどんな人?」と見られているような気がします。「ママと違う?」 「でも、安心できる人かな?」と確かめているのでしょうか?

 赤ちゃんは、ミルクを飲む時、話しかける時、遊ぶ時など、大人の顔をじっーと見ます。 そのような子どもたちに顔の表情が出てくる絵本を読んでみました。

4月に1歳になったばかりのRちゃんは、『おつきさまこんばんは』が大好きです。 読みながらページをめくっていくと、「おつきさまだ!」のページでそれまで神妙だった顔つきが、 にこっと笑顔になりました。おつきさまの表情を感じとったのですね。裏表紙を見せ、大人が「べー」 と舌を見せるとRちゃんもまねして舌を出していました。また、10か月のSくんは、とにかく早くページをめくって欲しくて、 読む間もなく手を出してきます。裏表紙の「べー」が見たいのです。そこで、表紙と裏表紙を開いて両方見せると、 それはそれは食い入るように見ていました。違いを探しているのでしょうか?絵本を閉じようとすると、“もっと”と言うように手を伸ばしてきました。

 1歳半位になると大人が読んでいる絵本に2人3人と集まってきて一緒に見るようになります。 「どうぶつ」が出てくる絵本で「わんわんだね」と大人が言うと、「わんわん」「わんわん」 と言って子どもたちで顔を見合わせます。子どもどうしで楽しめるのも保育園ならではですね。 初めての絵本との出会いを、子どもたちの中で豊かなものにしていきたいと考えています。

第2回 『もぐもぐ ごっくん』

 4月に入園したAくんも、6か月になり離乳食が始まりました。 初めは、野菜スープの上澄みを「ごっくん」と飲み込む練習です。口に含むと「いつものミルクと違うな?」 という顔で味を確かめているようです。反対のテーブルでは、もうすぐ離乳食卒業のEちゃんが、丸く握られたおにぎりを自分で持ってほおばっています。 Fちゃんは、茹でたセロリを小さな歯でしごいています。小さな赤ちゃんは、食べることが大好きです。

 絵本を読もうと0歳児クラスに行きました。以前は、私の顔を見て泣いていたJくんが絵本を持って「読んで」というようにやってきました。 入園してから3か月間の成長を感じました。

 そんな子どもたちに『くだもの』や『ぱんだいすき』など、食べ物の絵本を読んでみました。 表紙を見せると、近づいてきてたたきます。「はやく、はやく!」と催促しているようです。 ページをめくりながら、大人が「はいどうぞ」とぶどうをつまんで口元に持っていくと、口を開けるHくん。 隣にいたIちゃんも「わたしもわたしも・・」と言うように口を開けてきました。次のページも見たくて絵本をめくろうとするKちゃんの姿もありました。 Rちゃんは、最後のページのバナナをみて、「あっ あっ!」と指差します。「これ、食べたことあるよ」と大人に話しかけているようです。

 赤ちゃんに絵本を読んでいると、「これは、なんだろう?」という好奇心と、「これ、知ってるよ」という満足感があるように思えます。そして、それを確かめるように大人の顔を見てきます。 「○○だね」と話すと、「そうそう」と言うようににっこりします。このように、言葉にはまだ表せない子どもたちですが、絵本を通して気持ちのやり取りができるのです。 気持ちが通じたときの子どもは、満ち足りた笑顔でいっぱいです。

 

第3回 『わんわん、にゃんにゃん』

 「わんわん、わんわん」園庭に迷い込んできたねこを見て1歳のYくんが言っています。 この時期の子どもたちは、動く生き物を見るとみんな「わんわん」になることが多いです。 自分の知っていることばで相手に伝えようとしているのですね。

 先日、保育園にやぎ、ひつじ、あひる、にわとり、うさぎ、モルモット、ハツカネズミなどの動物がたくさんやってきました。 移動動物園です。初めは、やぎ、ひつじ等の鳴き声に圧倒されていた赤ちゃんたちですが、幼児クラスの子どもたちがえさをやったり、 抱っこする姿を見て少し安心したようで、動物のいる柵の方に近づいていく子もいます。でも、うさぎが動くとどきっとしていました。

 子どもたちは、動物の出てくる絵本が大好きです。散歩先や身近な場所で見た経験があって、 それをもう一度絵本の中で体験するということが喜びなのでしょう。「これ、見たことある」 「これ、知っているよ」と言うように、絵本に出てくる動物を見ながら大人に語りかけてきます。

 そんな子どもたちに『もう おきるかな?』を読んでみました。最初はねこが寝ている姿をじーっと見ていましたが、 Rちゃんが「ねんね、ねんね…」と言うと、他の子どもたちも「ねんね、ねんね…」と同じ言葉を繰り返し、 「そうだね、そうだね」と言っているようです。読み終わり、大人が床にごろんと寝転がって「ねんね、ねんね」と言うと、 子どもたちも真似して寝転がりました。大人が、子どもの背中をトントンとたたき寝かしつけの真似をすると、Hちゃんが人形を持ってきて、 トントンするではないですか!これには大人も思わずにっこり。心温かな気分になりました。 日頃、自分がしてもらっていることをやってみたいという気持ちが育っているのですね。または、お母さんや先生の気分になっているのでしょうか?

 小さい赤ちゃんですが、色々なものを見て、聞いて、自分のものとして吸収しているのだなと思う場面に数々出会います。 そのような赤ちゃんに豊かな経験をさせたいと思って保育をしています。

第4回 『のせて、のせて』

 「消防車、見に行こう」と言って、0歳児クラスの子どもたちを散歩に誘うと、「はやく、はやく」「いこう、いこう」というように、ドアの方に駆け寄っていきます。子どもたちは、散歩が大好きです。近所に消防署があるので、消防車や救急車をよく見に行きます。間近に見る消防車を指差して得意げなHちゃん。通りを走る路線バスを見て、「バッバッ」と大人に教えるYくん。子どもたちは、動く乗り物が大好きです。

 保育園では2月に、「はるの会」という生活発表会があり、絵本のお話をごっこ遊びで楽しみます。入園してから、「どうぶつ」「たべもの」「のりもの」など、主に物の絵本を見ていた子どもたちが、この頃には短いお話のある絵本も楽しめるようになってきます。

 『のせて のせて』(文・松谷みよ子 絵・東光寺啓/童心社)は、子どもたちがお気に入りの絵本の一つです。次々に出てくる動物がどんどん車に乗っていく姿に、「ぶーぶー」と、興奮して指をさして話すIくん。トンネルの場面で暗くなったページに顔を曇らせるRちゃん。暗いトンネルを抜けて明るくなると、安心した表情の子どもたち。短いお話の中の起承転結を、子どもたちは理解し楽しんでいるのです。

 絵本を読んだ後に早速、箱車を使って「のせて、のせて」ごっこをしました。大人が用意した車に次々と子どもたちが乗って行き、トンネルに見立てた黒い布を被せると少しびっくりした様子。でも、すぐに布を取るとにこにこ笑顔になり、「もっかい(もう1回)」と再びやってほしがるのでした。このように、みんなで一つのお話を楽しめるなんて素敵ですね。

 赤ちゃんの好奇心は旺盛です。絵本を通して、確認したり、新しいものに出会ったり、共感したり、様々な発見をしているのでしょう。それらを、信頼できる大人と築いていけたら素敵ですね。そして、私たち大人も、赤ちゃんから瑞々しい感性を受け取っているのです。

 「子どもの手の届くところに絵本を……」これからもこの思いを胸に、子どもたちと絵本を楽しんでいきたいと思います。

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